古来、優れた宗教家は神通力（じんつうりき）を具えていると信じられてきました。人々にとってそれが、救いの証しでもあったからです。
我が国でも神通力で知られる人は少なくありません。代表的なところでは修験道（しゅげんどう）の祖といわれる役行者（えんのぎょうじゃ）・神変大菩薩（じんべんだいぼさつ）の名が示す通り、呪術に勝れ、鬼神（きじん）を自在に使って、さまざまな不思議を現したと伝えられています。
さらには、真言密教の祖である弘法大師（こうぼうだいし）についても超自然的な救いの話は無尽蔵で、今も日本中にその伝説が残されているほどです。
そもそも密教においては、修法を成就した者はみな神通を得るとされ、その宗旨を神通乗（じんつうじょう）とも称しています。密なる法流のなかにみ仏の大いなる救いの力が脈打っているのもうなずけます。
み仏は 涅槃経（おしえ）と共に 住してぞ 不思議の救け 示すものなり
『涅槃経（ねはんぎょう）』においてもこの歌のように「我すでに久しく大涅槃に住して、種々神通変化を示現す」と示され、さらには大涅槃の真実義を修する菩薩には、漏尽通（ろじんつう）、天眼通（てんげんつう）、天耳通（てんにつう）、如意通（にょいつう）、多心通（たしんつう）、宿命通（しゅくみょうつう）の六神通が具わることが説かれております。
み仏の救いをいただくだけでなく、教えを実践する一人ひとりが神通を得ることができるというわけです。
神通ということは、未だ見ざるものを見、未だ聞かざるものを聞く、そして、過去を知る宿命通、あるいは現在の状況をピタリ観察して、未来を的確に示してその人を救っていく。こういう神通の使命があるわけです。
中でも漏尽通（ろじんつう）は、一切の煩悩を滅し尽くす力であり、仏教の聖者に特有のものです。外道（仏教以外）のものは、どんなに努力しても五神通までしか得られないからです。
六神通を開発することは並大抵のことではない。精進努力して、僅かなことでもゆるがせにせず、み仏に帰一していくことです。
なんといっても我が身を捧げる行いが大切なのです。
真如苑の教学より抜粋
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